チョコレートの原料はカカオ豆ですが、生産国で発酵から乾燥までが行われます。乾燥したカカオ豆は袋詰めにされ、工場へ送られますが、ここからチョコレートができるまでは巨大な精密機械を何台も経て完成します。
ここでは工場からチョコレートができるまでの製造工程の流れを見ていきましょう。
チョコレートの製造工程の流れ(簡略版)
まずは簡単なチョコレートの製造工程を紹介します。
- 原料(カカオ豆)の受け入れ
- 選別(クリーナー)
- 焙煎(ロースト)
- 分離(皮を取り除く)
- 磨砕(すりつぶす)
- 混合(混ぜ合わせる)
- 微細化(細かくする)
- 精練(コンチング)
- 調温(温度調整)
- 充填(型に流し込む)
- 冷却(冷やす)
- 型抜
- 検査・梱包
- 出荷
製造工程の中でチョコレートの味わいや香味を決めるのに重要なのが「ロースト(焙煎)」と「コンチング(精練)」です。
言葉ではわかりにくいので、動画で確認しましょう。
では次に一つずつ詳しく紹介します。
チョコレートの製造工程の流れ(詳細版)
①原料(カカオ豆の受け入れ)
発酵・乾燥を終えたカカオ豆は生産国から工場に運ばれます。小規模な農家で作られたカカオ豆はワインの原料となるブドウと同じように年によっても品質はさまざまです。
ですが、膨大な量のカカオ豆が集まってくることで、一定の品質をクリアしたチョコレートの原料となります。
②選別(クリーナー)
悪い豆や石、砂、ゴミなどの異物を取り除き、良質なカカオ豆だけを選びます。生産国でのカカオ豆処理中に混入した異物を風選や比重選別、マグネットによる磁性金属除去などによって取り除きます。
異物を除去されたカカオ豆は品種ごとにサイロ(収穫する倉庫や容器)に貯蔵され、必要に応じて次の工程に送られます。
③焙煎(ロースト)
100~140℃の熱を加えて、カカオ豆独特の香りと風味を引き出します。チョコレートの香りはローストによって決定されます。
コーヒー豆と違い、カカオ豆はほとんど焦がさず、焦げる寸前のところで止めなければならないため、非常に難しい作業です。
ローストによって生じる香りの成分は1,000種類以上あることがわかっています。香気成分はフルーツ調、ハーブ調、甘い香りなどさまざまです。しかし、それぞれの成分がチョコレートの香気にどのように寄与し、相互に影響し合っているかは、完全にはわかっていません。
カカオ豆の代表的なロースト方法
カカオ豆のロースト方法はいくつかの方式があり、どの方式で行うかによって、できあがるカカオマスの品質も異なってきます。
代表的なロースト方法は2つあります。
「豆ロースト法」:カカオ豆をのそのままローストする
「ニブロースト法」:カカオ豆を粗く砕き、シェル(種皮)などを取り除いたカカオニブとの状態でロースト
④分離(皮を取り除く)
カカオ豆を粗く砕き、シェル(種皮)などを取り除き、カカオ豆からカカオニブを取り出します。この作業を「ウィノーイング(風選)」といい、これを行う装置を「ウィノワ」と呼びます。
砕かれたカカオ豆はシェルとカカオニブが混在しています。ふるいによって分離し、さらに細かいふるいで分離する層さを連続的に行います。
シェルとカカオニブの混合物は上方へ流れる気流の中に放出されますが、シェルは薄く細かいため巻き上げられて上昇し、カカオニブは粒状なので下へと落ちます。
こうしてシェルとカカオニブが分離されます。
⑤磨砕(すりつぶす)
ウィノーイング処理で取り出されたカカオニブは細かくすりつぶされ、ペースト状のカカオマスになります。カカオニブは繊維質が多いため非常に堅く、さまざまな装置を組み合わせて粉砕していきます。
その過程で、カカオニブに含まれるココアバター(油脂)の存在により、固体のカカオニブは粘土のある液体になります。
こうして得られたカカオマスはタンクに貯槽され、チョコレートやココアの原料となります。求めるチョコレートの品質に従い、複数の異なるカカオマス(カカオの品種やロースト条件の異なるもの)をブレンドすることもあります。
⑥混合(混ぜ合わせる)
ここからチョコレート生地の製造の工程です。カカオマスに砂糖、ココアバター、ミルクなどを混ぜ合わせます。
※ココアバターはカカオマスを圧搾することで得られます。
製造するチョコレートのレシピ(配合)に応じて、各原料を計量します。次の工程のロール粉砕機(レファイナー)による微細化により最適な硬さにすることが大切です。
⑦微細化(細かくする)
複数のロールで構成されたレファイナーという装置で生地を微細化します。これにより、チョコレート粒子の大きさは20ミクロン以下になります。
人間の舌は一般的に、20ミクロン以下ではざらつきを感じないので、この大きさに微細化することで、舌触りがなめらかなチョコレートになります。
⑧精練(コンチング)
精練はチョコレート製造のみの工程です。コンチェという機会でチョコレート生地を長時間練り上げる作業で、これを「コンチング」と言います。
19世紀に固形のチョコレートが発明された際、開発された装置の形状がコンチ貝に似ていたことから、その名がつけられました。
当時のレファイナー(ロール粉砕機)は性能が悪く、チョコレートの粒を十分に小さくすることができなかったので、コンチェで長時間処理することで「練る」と「粉砕」とを同時に行っていました。
現在ではレファイナーの性能が飛躍的に向上したため、粉砕の機能は不要になりました。今はコンチェで行っているのは「練る」作業のみです。
チョコレート工場ではさまざまな機械が稼働していますが、一番の高価な機械はコンチングで使用する「コンチェ」です。練っているうちに生地がやわらかくなると攪拌翼の力が伝わりにくくなるので、負荷に応じて攪拌の速度を上げるなどの制御が自動的に行われる複雑なシステムも備えています。またチョコレート生地の攪拌は強い力が必要なので電力も一番多く使われるなど、一台1億円以上する機械もあります。
⑨調温(温度調節)
チョコレートを固める工程では温度調節が最も大切です。チョコレートの温度を調節し、ココアバターを安定した結晶にする作業がテンパリングです。
工場で使用されるテンパリングマシンでは、下部から供給されたチョコレートが攪拌されながら冷却ゾーンを通過していきます。所定の温度に達すると、次は加熱ゾーンへと導かれて再加熱され、テンパリングは終了します。
テンパリングが正しくなされることで初めて、型から剝離でき、艶のある見た目と口どけの良いチョコレートができます。
⑩充填じゅうてん(型に流し込む)
モールダーでチョコレート生地を型に流し込み、型を激しく振動させて気泡を完全に除き、型の隅々までチョコレート生地を行き渡らせます。
⑪冷却(冷やす)
冷却コンベアにのせて、冷やし固めます。冷却初期にはゆっくりと冷やし、冷却の第2段階ではさらに冷たい温度で強制冷却し、チョコレートの固化を促進します。
冷却の最終段階では、若干の温度上昇を行います。こうした温度管理をしっかりと行うことで「ファットブルーム」や「シュガーブルーム」を防ぐことができます。
ココアバターの結晶が変化して、チョコレートの表面が白くなること
「シュガーブルーム」
砂糖がチョコレートの表面で結晶化することどちらも風味が損なわれて口どけが悪くなってしまいます。
⑫型抜
デモールダーという機械で型を裏返し、チョコレートをはがします。
⑬検査・梱包
ラッピングマシンでチョコレートをアルミ箔やレーベルで包装し、最後に段ボールケーズに箱詰めします。
⑭出荷
倉庫の中で一定期間熟成させた後、チョコレートが溶けないよう温度管理された状態で各店舗まで運ばれ、店頭に陳列されます。
チョコレート製造のまとめ
チョコレートの原料であるカカオ豆を出荷するまでに一番大切なのが「発酵」です。そして工場に入ってから大切な工程が「ロースト(焙煎)」と「コンチング(精練)」です。
この3つでチョコレートの味わいや香味が決まります。
チョコレートには多くの工程がありますが、ここでは「ロースト(焙煎)」と「コンチング(精練)」を覚えるようにしましょう。
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