お菓子の「チョコレート」と人気のホットドリンク「ココア」の原料は同じカカオです。ではその違いは何かおかわりですか?
製造方法や栄養成分に違いがあるのか?またココアと似ているホットチョコレートは同じ飲み物なのかなど詳しく紹介します。
チョコレートとココアの製造工程の違い
カカオが原料のチョコレートとココアを製造する際にカカオ豆を粗く砕き、シェル(種皮)を取り除いてカカオニブを取り出してローストし、すりつぶしてカカオマスにする工程は一緒です。
大きく違うのは、ココアを製造する場合はロースト前のカカオニブに「アルカリ処理」を行う点です。カカオはもともと酸味が強いのですが、アルカリで中和することで風味がよくなり、色調にも深みが出ます。
そしてもう一つ「油脂分」を減らします。カカオマスから一定量のココアバターを分離し、細かい粒子へと粉砕してココアパウダーにします。つまり、簡単に言うと
- カカオマスから一定量のココアバターを抽出した残りがココア
- カカオマスにココアバターや砂糖、ミルクなどを加えたのがチョコレート
という違いがあり、さらに細かく説明するとココアを製造する場合はロースト前のカカオニブにアルカリ処理が加わります。
ココアパウダーはココアバターの量が減ることで油脂分が減り、お湯と混ざりやすくなります。ただしココアもこれだけでは甘くなくて飲みにくいので、商品によっては砂糖や粉乳などを加えて
※ココア(パウダー)になってもココアバターがゼロになったわけではありません
ココアが発明されたきっかけ
ヨーロッパでは19世紀に入るとチョコレートの消費が増えるとともにチョコレート会社が続々と誕生しました。
スペインに渡ってから砂糖やミルクを入れて格段においしくなったチョコレート飲料にはいくつか問題点がありました。それはカカオ豆に約55%含まれるココアバターです。
当時ヨーロッパに広められたカカオは油脂分が多く、水やミルクとも混ざりにくかったので、決して飲みやすいものではありませんでした。また、カカオ豆には発酵過程で生成した酢酸などの有機酸が残っており、酸味も強く、湯気と一緒にプーンと立ちのぼる酸臭は鼻をつきました。
これを解決したのがオランダ人のC.J.バンホーテンで世界的に有名なココアブランド「バンホーテン社」の創始者です。
彼はココアを発明し特許を取得しましたが、この発明は2つからなっています。
①酸味が強いチョコレート飲料をアルカリで中和することにより、刺激や渋味を減らし、より一層のみやすくする方法。アルカリ処理(アルカリゼーション)をすることで色調に深みが出て、味もマイルドになりました。
この製法は「ダッチプロセス」と呼ばれ、現代もココア製造法の基本として本質的には変わっていません。
②カカオ豆を搾ってココアバターを部分的に取り除く圧搾機を開発したこと。すりつぶしてできたカカオペーストは約55%のココアバターを含んでいますが、この圧搾機を用いることで28%まで減らすことに成功しました。
こうして搾り取って残った固形分を細かく砕いて粉末状にしたものがココアパウダーです。ココアパウダーは油脂が少ないので、お湯と混ざりやすくなりました。
チョコレートとココアの栄養成分の違いは?
基本は同じ原料のカカオを使用し、それに砂糖やミルクなどを加えてチョコレートやココアになります。ココアはカカオマスからココアバターを抽出していると言っても全てを抽出しているわけではないので、ココアバターが含まれているので、どちらも原材料は同じ物を使用しています。
また最近は「ハイカカオ(高カカオ)チョコレート」や「ピュアココア」など砂糖を極力使用しない商品も出ています。そのため単純に「チョコレート」と「ココア」と言っても、どの種類を選ぶかによって栄養価が変ってきます。
栄養成分の種類はチョコレートもココアも変わらず、違いといえばココアバターの量がココアは少ないため油脂分が少ないです。
結局メインの原料は同じカカオですので、カカオや砂糖などがどれくらい占めているかで栄養価が変わるため、どちらが健康や美容に良い単純には比べることができません。
タンパク質、ミネラル、食物繊維、カカオポリフェノールはどちらにも含まれていますし、ビタミン類も少量ですが含まれています。
ミルクチョコレートとミルクココアの栄養価の比較
ミルクチョコレートとミルクココアの可食部100g当たりの栄養価を日本食品成分表で比較してみました。どの商品を分析したのかはわかりませんが、一般的にカカオマスやココアパウダーよりも砂糖の方が多いです。
※ミルクココアの別名:インスタントココアまたは調整ココア
栄養成分 | チョコ | ココア | |
エネルギー | 558kcal | 412kcal | |
タンパク質 | 6.9g | 7.4g | |
脂質 | 飽和 | 19.88g | 3.98g |
一価不飽和 | 10.38g | 2.05g | |
多価不飽和 | 1.08g | 0.24g | |
炭水化物 | 55.8g | 80.4g | |
食物繊維 | 3.9g | 5.5g | |
(水溶性) | 1.0g | 1.3g | |
(不溶性) | 2.9g | 4.2g | |
食塩相当量 | 0.2g | 0.7g | |
ミネラル | ナトリウム | 64㎎ | 270㎎ |
カリウム | 440㎎ | 730㎎ | |
カルシウム | 240㎎ | 180㎎ | |
マグネシウム | 74㎎ | 130㎎ | |
リン | 240㎎ | 240㎎ | |
鉄 | 2.4㎎ | 2.9㎎ | |
亜鉛 | 1.6㎎ | 2.1㎎ | |
銅 | 0.55㎎ | 0.93㎎ | |
マンガン | 0.41mg | 0.74mg | |
ヨウ素 | 19㎍ | ||
セレン | 6㎍ | ||
クロム | 24㎍ | ||
モリブデン | 11㎍ | ||
ビタミン | ビタミンA | 63㎍ | 8㎍ |
ビタミンD | 1.0㎍ | ||
ビタミンE | 7.7㎎ | 1.7㎎ | |
ビタミンK | 6㎍ | ||
ビタミンB1 | 0.19㎎ | 0.07㎎ | |
ビタミンB2 | 0.41㎎ | 0.42㎎ | |
ナイアシン | 1.2㎎ | 0.3㎎ | |
ビタミンB6 | 0.11㎎ | 0.07㎎ | |
ビタミンB12 | |||
葉酸 | 18㎍ | 12㎍ | |
パントテン酸 | 1.56㎎ | 0.9㎎ | |
ビオチン | 7.6㎍ | ||
ビタミンC | |||
テオブロミン | 0.2g | 0.3g | |
ポリフェノール | 0.7g | 0.9g |
チョコレートの方が多い成分もあれば、ココアの方が多い成分もありますが、注意したのは可食部100gです。
明治のミルクチョコレートは1枚50gなので100gに換算すると2枚分ですが、ミルクココアは実際に1杯5,6gしか使用しないので、100g使用すると20杯近くなります。となると単純に比較できないですね。
また、ココアはお湯と牛乳どちらで溶かすかによって栄養価が変わりますし、ハイカカオチョコレートやピュアココアの場合はさらに栄養価が高くなります。
ホットチョコレートとココアの違いは?
ではチョコレートを温めてドリンクにした「ホットチョコレート」と「ココア」には違いがあるのでしょうか?実は明確な違いはありません。
もともとは16世紀にアステカ帝国(今のメキシコ)でカカオ豆から作った飲み物を「ショコラトル」と言い、これがチョコレートの元祖でした。
これがヨーロッパに広がり、スペインではアステカ式のレシピにならっていましたが、このままだと苦い飲み物なので、砂糖で甘みをつけたり、シナモンなどを加えて飲みやすくしたと言われています。その後改良を経て現在のような「ホットチョコレート」になりました。
一般的にはチョコレートを牛乳で溶かした飲み物が「ホットチョコレート」、ココアパウダーを牛乳やお湯で溶かしたものが「ココア」というイメージですが、ココアパウダーを使った飲み物もホットチョコレートと呼ぶことがあり、はっきりとは区別されていません。
お店で飲む場合はチョコレート、またはココアパウダーを溶かしたものなのか確認してみてください。
まとめ
チョコレートとココアの違いは簡単にいうとココアバターがたくさん入っているかいないかの違いです。
カカオマスから油脂分が多いココアバターを抽出した固形分を砕くとサラサラのココアパウダーができます。
チョコレートはカカオマスからココアバターや砂糖、ミルクを混ぜて作られ、ココアも砂糖やミルクを加えた「調整ココア」も販売されているように、同じような原料を使用しているので、栄養価も大きな違いはありません。
最近はハイカカオチョコレートやピュアココアなど砂糖がない(または極端に少ない)商品が人気ありますが、その場合はカカオの割合が多いのでカカオの健康効果や美容効果はどちらの商品でも期待ができます。
最近はカカオに多くの効果や効能があることがわかっているので、ぜひ毎日食べたり、飲んでみてはいかがでしょうか。
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