代表的なお菓子であるチョコレート。その原料の「カカオ」のことを詳しく知っている人は少ないのではないでしょうか?
チョコレートを知るにはまずはカカオを知る必要があります。カカオの特徴や収穫から出荷されるまでの流れを見ていきましょう。
カカオとは?「神々の食べ物」と言われる理由
カカオは「テオブロマ カカオ リンエ」という学名を持つアオイ科の植物で、18世紀にスウェーデンの植物学者リンネが命名しました。
ギリシャ語では「テオ=神々」、「ブロマ=食べ物」という意味があり、カカオはその名のとおり「神々の食べ物」として重宝されていました。
カカオがこのように呼ばれたのはまず、古代のメソアメリカ(現在のメキシコの南半分からグアテマラ、ベリーズ、エルサルバドルとホンジュラスの西半分地域)では神々に捧げられた特別な作物であり、カカオの実を神に捧げている石彫がメソアメリカ各地で出土しています。
またもう一つの理由は「カカオがまさしく美味しさと栄養のかたまり」であり、神々の食べ物にふさわしいという説にもよります。
カカオの実は英語では「カカオボッド(Cacao pod)」、フランス語では「カボス(Cabosse)」と言います。
カカオ豆は「貨幣だった」
チョコレートの原料のカカオは16世紀初めにメキシコを征服したスペイン人によってヨーロッパに広められましたが、紀元前2000年ごろからメソアメリカで栽培されていたと推定されます。このことが「カカオは4000年もの歴史を持つ」と言われるゆえんです。
また古代から中世のメソアメリカではカカオ豆に神秘的な力があると信じられ、儀式の捧げ物や薬などに用いられるほか、「貨幣」としても利用されていました。
王家の金庫には莫大な量のカカオ豆が貯蔵されていたそうで、当時は飲み物(ショコラトル)として大切なものでしたが、飲むことができたのは王族、貴族、特権階級だけでした。
カカオの生態!発芽から出荷まで
カカオの発芽から成木
カカオは苗から育てた場合、3~4年目ぐらいから結実し、高さは6~7m、幹の太さは10~20㎝の成木になります。カカオの葉は風邪に弱く、直射日光を好まないため、木が大きくなるまで一般的には日蔭樹(シェイドツリー)を必要としています。※日蔭樹として一般的なのはバナナの樹
開花と結実
枝先だけでなく幹の太いところにもかわいらし花をつけ、1年中咲きます。大きさは1㎝程度、色は樹の種類によって、白、ピンク、バラ色、黄、赤など様々です。
受粉した花は約半年後に結実します。その実は「カカオポッド」と呼ばれ、ラグビーボール状に生長します。半年に1回結実するので、1年に2回収穫が可能です。
長さ約15~20㎝、直径7~15㎝、重さは250g~1㎏にもなる実が、1本の樹に年間で平均20~30個ほどつきます。
成熟したカカオボッドは、厚さ約1㎝の堅い殻を持ち、その中にあるパルプと呼ばれる白くヌルヌルとした甘酸っぱい果肉がカカオ豆の周囲に存在します。このカカオポッドの中には30~40粒ほどのカカオ豆が入っています。このカカオ豆はカカオの樹の種子そのもので、土に植えれば芽が出ます。
収穫とポッド割り
収穫はナタや長い棒の先にナイフをつけた道具でカカオポッドを切り落として行います。その後ナタや木の棒を使ってカカオポッドを割り、中に入っているカカオ豆を白いパルプごと取り出します。
発酵
収穫したカカオポッドからカカオ豆を取り出して、すぐにローストすることはできません。まずカカオポッドからカカオ豆をパルプごと取り出して、それをバナナの葉で覆ったり、木箱に入れたりして発酵するのを待ちます。
始めはカカオ豆をしっかりと包んでいた白いパルプは、発酵の過程で微生物によりほとんどが液化して消失し、パルプに包まれていたカカオ豆が現れます。ここでようやくカカオ豆だけを取り出すことができるのです。
この時点のカカオ豆は発酵により化学変化を起こしたためチョコレート色に変化し、独特の香りを放つようになっています。そして後の工程(ロースト)でチョコレート香味となる前駆体が生成されます。
※前駆体:化学反応などによってある物質が生成される前段階にある物質
発酵はチョコレートのおいしさを左右する重要な工程です。発酵させていないカカオ豆でチョコレートを作ろうとしてもチョコレートの味にはなりません。上質なチョコレートを作るには、カカオの発酵のプロセスがとても大切です。。
カカオ豆の発酵は化学的に未解明な部分が多く、どんな微生物が働いているのか、よくわかっていないのです。ただし、生産地によって品質が大きく異なるのは、働いている微生物が違うことが理由の一つだと考えられています。
乾燥
発酵後のカカオ豆は水分を多く含んでいます(約40%以上)。そこで、貯蔵や輸送中における腐敗を防ぐため、カビが増殖しない水分域である7~8%程度になるまで、天日乾燥、または機械で人工的に乾燥させます。
出荷
乾燥が終わったカカオ豆は主に麻袋に詰められて消費国へ船舶で輸出されます。ここまでがカカオ生産国での仕事となります。
まとめ
カカオが「神々の食べ物」と言われた理由は神々に捧げられた特別な作物であり、また美味しさと栄養のかたまりであり、神々の食べ物にふさわしいという説もあります。
そしてカカオを出荷する前でチョコレートの味わいや香味を決めるのに、特に重要なのが「発酵」です。
最近は腸内環境を改善するために発酵食品がブームになっていますが、チョコレートも発酵食品と言っても過言ではないかもしれません。
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